整骨院運営【連載コラム】個別指導にならないために「その1」

立証資料を意識した隙のない対策を!

三谷 淳 みたに じゅん
未来創造弁護士法人 代表弁護士
日本一裁判しない弁護士
ケイズグループ顧問弁護士

皆さん、はじめまして!
未来創造弁護士法人 弁護士の三谷淳と申します。
弊法人では、接骨院業界に特化した顧問弁護士サービスをご提供しており、全国の治療院様からご契約いただき、経営のサポートをさせていただいています!
接骨院業界は制度の運用に流動的・あいまいな部分が多く、また、一部の人による不正が取り上げられることによって、多くの真面目に経営をされている治療院のイメージまでもが低下してしまっているという現状があります。
私たちは、そのような逆境にある柔道整復師の皆様を法的な面からサポートしたいという思いで、全力でお手伝いをさせていただいております。
本コラムの初回は、「個別指導にならないために」と銘打って、
①この4月からの制度改正によって何が変わるのか、
②個別指導にならないためにはどのように対策をすべきかを、2回にわたってお伝えしていきます!
1 個別指導の恐怖
「いつか自分の院も個別指導・監査に入られるのではないか?」
接骨院・整骨院を経営されている皆さんは、このような不安を抱えられている方が多いのではないでしょうか?
「うちの院はしっかりやっているから大丈夫!」
そのような考えをお持ちの方も、4月からの制度改正対策は万全でしょうか?
ご存知の通り、平成29年の2月に、柔道整復師に対する審査・指導の制度運用の方法を改正することが決定され、その運用が4月から始まっています。
この対策を怠っていると、あっという間に審査・個別指導・監査を経て受領委任停止処分・療養費返還請求を受け、廃業に追い込まれることにもなりかねません。
そこでまずは、制度改正に関する知識を身に付けて、万全な対策を講じるための基礎固めをしていきましょう!
2 制度改正の概要
4月からの制度改正の主な内容は、次の3点です。
①部位転がしの兆候がみられる院について重点的に調査を行う
②重点的に調査を行うために、柔整審査会や保険者の調査権限を強化する(詳細な照会による事実調査・カルテ等資料提出の要求・厚生局への情報提供)
③調査の結果客観的な証拠が複数あり不正の疑いが強いものについては、いきなり監査を行うことがある(個別指導の省略)
いずれも今後重要なポイントとなりますので、それぞれ、少しずつ詳しく見ていきましょう。
⑴ 調査対象の決め方は?
当局は、重点的調査の対象となる院(部位転がしの兆候がみられる院を、どのような基準で決めているのでしょうか。
改正案をみると、次の兆候がみられる院については重点的な調査を行う旨が明記されています。
・3部位以上の多部位施術
・3か月を超える長期施術
・月10回以上の頻回施術
・負傷と治癒を繰り返す施術
保険者・審査会・厚生局は、これらの兆候がどの程度濃厚にみられるかによって、調査・指導対象決めているといってよいでしょう。
⑵ 誰がどんな権限をもつか?
次に、②(柔整審査会・保険者の調査権限の強化)について具体的にみていきましょう。
改正案では、次のような権限強化が図られています。
・柔整審査会に、柔整師に対して報告を求める権限を認める
・保険者と柔整審査会に、領収証発行履歴や来院簿等の資料提示を柔整師に求める権限を認める
このように、従前の制度と比べて、保険者と柔整審査会の調査権限が強化されていることが分かります。
柔整師の立場から見れば、調査をする主体が増え、調査を受ける機会・可能性が増えることを意味するといってよいでしょう。
さらに、改正案では、保険者らが集めた情報をどのように使うかということについても触れられています。
保険者や柔整審査会は、次のいずれかに該当するものについて、優先的に厚生局に情報提供する
・不正請求について客観的な証拠があるものが複数患者分あるもの
・患者調査等の結果、不正請求の疑いが強いものが複数患者分(概ね10人の患者分あることが望ましい)
このように、保険者や柔整審査会が集めた情報は、不正の疑いが強いものから、厚生局に提供されるという仕組みになっています。
⑶ 厚生局の対応は?
では、そのようにして情報提供を受けた厚生局の対応は、どのようになるでしょうか。
改正案には、次のように書かれています。
・情報提供があったもののうち、不正請求が複数あるもの、不正請求の証明度が高いものを優先して個別指導、監査を行う
・証拠がそろっているものは個別指導を省略できる
このように、厚生局は、提供された情報を精査して、不正請求であることが証拠から確実にわかるもの、不正請求が複数(多数)認められるものから優先的に、個別指導・監査・受領委任取扱停止処分の対象としていくことになります。
3 どう対策すべきか?
以上が、本年4月から施行される制度改正の大まかな内容です。このような改正内容からは、当局が不正の取締に本腰を入れて取り組むという強い姿勢が見て取れます。
次号のケイズマガジンでは、今回ご紹介した制度改正の概要を踏まえたうえで、個別指導にならないためにどのように対策を立てれば良いのか、具体的な対策方法について解説いたします!
真面目に仕事をしている柔整師の皆様を応援するため、次号も最新の情報をお届けいたします!(K`s Magazine6月号より転載)
(弁護士 三谷 淳)